データサイエンティストの仕事内容を1つの案件で追う|依頼から運用までの流れと1週間の時間配分
- 最終更新日:2026/10/13
データサイエンティストの仕事と聞いて、モデルを作る場面だけを思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし実際の仕事時間を振り返ると、モデルを作る工程はごく一部で、その前後にある作業のほうがずっと長くなります。
この記事では、あるチェーン飲食店の来店数予測を想定した架空のモデルケースを使い、データサイエンティストの仕事を依頼から運用まで順に追います。そのうえで、1週間の時間配分や職場による違いも整理するので、職種の中身を具体的に知りたい人は参考にしてください。
データサイエンティストの仕事は、1つの案件を「依頼から運用まで」動かすこと
データサイエンティストの仕事は、分析手法を使うことそのものではなく、事業の課題をデータで解ける形に直し、結果を現場の判断に結びつけるところまでを担う点に特徴があります。1つの案件は、短くても数週間、長ければ半年以上かかります。
ここでは、全国に店舗を持つ飲食チェーンから「店舗ごとの来店数を予測して、仕込み量と人員配置に生かしたい」という依頼を受けた場面を例に、各段階で何をするのかを見ていきます。
来店数予測の案件を時系列で追う
最初の1週間は、依頼の中身を確かめる
依頼を受けて最初にやるのは、分析ではなく話を聞くことです。予測したいのは1日単位なのか時間帯別なのか、予測が外れたときに困るのは仕込みの廃棄なのか人手不足なのかを、店舗運営の担当者に確認します。ここで目的があいまいなまま進むと、後工程のやり直しが増えます。
同時に、使えるデータの棚卸しも行います。POSの販売履歴、予約システムの記録、店舗の立地情報などが、どの形式で、何年分あるのかを調べます。
次の数週間は、データを整える作業に使う
POSデータは店舗ごとに商品コードが違っていたり、閉店や改装で数日分が欠けていたりします。祝日や近隣のイベント情報、天気の履歴などを加えて、分析に使える1つの表にまとめます。
この前処理に、案件全体の半分近い時間を使うことも珍しくありません。地味な工程ですが、ここで入れた誤りは最後まで残るため、最も神経を使う部分でもあります。
モデルを作って、現場の感覚と照らし合わせる
整えたデータを使い、まず単純な回帰モデルで基準となる精度を出し、そのうえで決定木系の手法などを試して改善を確かめます。大切なのは、精度の数字だけで判断しないことです。予測結果を店長に見てもらい、「金曜の夜はもっと来るはず」といった現場の感覚とずれていないかを確認します。
ずれがあれば、その店舗に特有の事情、たとえば近くの会社の飲み会需要などを調べ、特徴量として加える検討をします。
予測を業務に組み込む段階で、エンジニアと協力する
モデルが完成しても、手元のノートブックで動くだけでは業務に使われません。毎朝、最新のデータで自動的に予測を出し、発注システムや人員配置の画面に反映する仕組みが必要です。この部分はデータエンジニアやシステム担当と分担して進めます。
この段階までを一人で完結する会社もあれば、分析までを担当して実装は別チームに引き渡す会社もあり、職場による差がもっとも大きく出る工程です。
運用が始まってからも、精度の見守りを続ける
稼働してからも仕事は終わりません。新メニューの導入や価格改定で来店の傾向が変わると、過去のデータで学習したモデルの精度は徐々に落ちます。定期的に予測と実績の差を確認し、必要があればモデルを作り直します。
1週間の時間配分でみる仕事の実態
案件の工程を、ある一週間の動きに置き換えると、前半は確認と調整、後半は分析とまとめという流れになる場合が多いと言えます。もちろん時期や職場によって変わりますが、目安として捉えてください。
前半は、データの確認と打ち合わせが中心になる
月曜から水曜にかけては、データの抽出や不備の調査、関係者との打ち合わせが続きます。自分一人で画面に向かう時間は、思われているより少なく、依頼者や他部署との会話が日に何度も入ります。
後半に、まとまった分析と資料づくりの時間を取る
木曜と金曜は、モデルの検証や結果の整理に集中する時間です。分析の結果を、判断する人に伝わる資料にまとめる作業も含まれます。資料づくりに時間を割くのは意外に思われることが多い部分です。
職場の種類で変わる仕事の比重
同じデータサイエンティストでも、働く場所によって仕事の比重は大きく異なります。
事業会社に所属する場合
自社の事業に深く関わり、同じテーマを長く追えます。分析の結果が施策にどう反映され、どんな成果になったかを見届けられる反面、社内の調整や、データ基盤の不足への対処に時間を取られがちです。
コンサルティングやベンダーに所属する場合
さまざまな業界の案件を短い期間で担当します。経験の幅は広がりますが、納品後の運用までは関われないことがあります。顧客に成果を説明する資料づくりの比重が高くなります。
フリーランスや在宅で働く場合
案件単位で契約するため、依頼内容の確認と成果物の定義がより重要になります。通勤せずに作業できる点は魅力ですが、社内データを使う案件ではセキュリティの条件が厳しく、データサイエンティストが在宅で働ける条件を確かめておく必要があります。
仕事の先に見えるキャリアの広がり
案件を経験するうちに、得意な工程が見えてきます。モデルの精度を追うのが好きなら専門性を深める方向、依頼者との調整が得意なら分析チームをまとめる方向に進むなど、分かれ道が現れます。選択肢の全体像はデータサイエンティストのキャリアパスの種類に整理されています。
業務の流れそのものを別の切り口で押さえたい場合は、基本を解説した記事とあわせて読むと、全体像の輪郭がより鮮明になります。
仕事の中身を知ったうえで選ぶ
データサイエンティストの仕事は、分析手法を使うよりも、問いを整え、データを整え、結果を使ってもらうところまで責任を持つ仕事です。前処理や調整の比重が大きいことを受け入れられるかどうかが、この職種を選ぶときの分かれ目になります。
飲食チェーンの来店数予測のように、自分が関心を持てる業界の課題を一つ想像してみてください。そこで必要になる作業の一つひとつを楽しめそうだと感じたなら、この仕事は相性が良いと言えます。
