データサイエンティストの始め方、3つの入口と最初の2週間で手を動かす内容
- 最終更新日:2026/10/27
データサイエンティストの始め方を調べると、学ぶべき知識の一覧は数多く見つかりますが、「明日から具体的に何をするのか」まで書かれたものは意外と少ないものです。実際のところ、データサイエンティストへの一歩目は、今いる立場によって合う入口が違います。社内にデータがある会社員と、手元に何もない学生とでは、最初に触るべきものが変わるからです。
この記事では、三つの入口の選び方、最初の2週間で用意する道具、そして最初の分析を1本仕上げるまでの流れを、具体的な題材を使って紹介します。
データサイエンティストの始め方は入口選びで決まる
データサイエンティストとして動き出す方法は、三つあります。どれが正解ということはなく、今の自分の環境で早く「本物のデータ」に触れられる入口を選ぶのが基本です。それぞれの入口の特徴を整理すると、次のようになります。
| 入口 | 向いている人 | 最初に触るもの | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 今の職場のデータ | 社内に売上や問い合わせなどのデータがある会社員 | 毎月の集計表、担当業務の記録 | データは社内の承認された環境で扱う |
| 公開データやコンペ | 学生や、職場で扱えるデータがない人 | Kaggleの練習用コンペ、公開データ | 精度だけでなく、問いと結論を書く練習もする |
| 隣接する職種 | 実務の中で経験を積みたい人 | データアナリストやBIエンジニアの業務 | どの役割に広げたいかを、早めに考えておく |
今の職場にあるデータから始める
会社員であれば、特に実務に近いのはこの入口です。売上の明細、問い合わせ履歴、Webサイトのアクセスログなど、多くの職場にはすでに分析できるデータが眠っています。毎月Excelで作っている集計表をPythonやSQLで再現する、担当商品のリピート率を顧客属性ごとに出してみる、といった小さな取り組みが、そのまま実務経験に近い材料になります。社内の業務課題に関わるため、結果を上司に見せる機会も作りやすく、データ活用の部署への異動につながるケースもあります。
公開データやコンペから始める
学生や、職場で扱えるデータがない人はこちらが入口になります。Kaggleには初心者向けの練習用コンペがあり、データの読み込みから予測結果の提出までを一通り体験できます。ほかの参加者が公開しているノートブックを参考にできるため、どこから手をつけていいかわからない状態でも動き出しやすいのが利点です。
隣接する職種を経由して始める
データアナリスト、BIエンジニア(社内のダッシュボードやレポート基盤を作る職種)、データエンジニアなど、データサイエンティストと同じデータを扱う職種で実務に入り、そこから役割を広げていく道もあります。いきなりデータサイエンティストの求人に応募するより、採用のハードルが低い傾向にあります。どの職種からどのように移っていけるかは、データサイエンティストのキャリアパスで段階ごとの役割として整理しています。
始めたばかりの時期に用意しておく道具
始めたばかりの時期は、環境構築で何日も費やしてしまいがちです。最初の2週間ほどは、次の道具を揃えて、とにかくデータを読み込める状態にすることだけを目標にしましょう。
| 用意するもの | 使い道 |
|---|---|
| Googleアカウント | Google Colaboratoryをブラウザで使うため |
| GitHubアカウント | 分析コードとレポートの置き場 |
| Kaggleアカウント | 公開データとコンペの利用 |
| 練習用の小さなCSVファイル | 読み込みや集計を試す最初の題材 |
PCに何もインストールしなくても始められる
Google Colaboratoryは、ブラウザ上でPythonを実行できる環境で、無料で使えるプランもあり、pandasやscikit-learnといった分析用のライブラリが最初から使えます。最初はAnacondaなどをPCに入れて環境を整える必要はなく、メモリの少ないノートPCでも小規模なデータなら十分に動きます。本格的に取り組むようになってから、ローカル環境を整えても遅くはありません。
コードは最初からGitHubに置く習慣をつける
分析したノートブックを自分のPCにだけ保存していると、後から見返すことも人に見せることも難しくなります。GitHubに置いておけば、変更の履歴が残り、そのまま将来の成果物にもなります。最初は使い方がわからなくても、ノートブックをアップロードするだけで構いません。
最初の分析を仕上げるまでの流れ
ここからは、シェアサイクルの利用データを例に、最初の分析を完成させるまでの流れを追っていきます。自転車の貸出回数と、気温や天気、曜日が記録された公開データは、Kaggleなどで入手できる定番の題材です。分析の進め方の型はデータサイエンティストのメソッドでも解説しています。
問いを一文で書き出す
いきなりデータを開くのではなく、「雨の日は晴れの日に比べて、貸出回数がどのくらい減るのか」のように、答えが数字で返ってくる問いを一文で書きます。問いが曖昧なまま始めると、グラフを大量に作ったものの何が言えるのかわからない、という状態に陥りやすいためです。
データの中身と欠けている値を確かめる
データを読み込んだら、行数と列数、各列の型、欠損値の数を確認します。日付が文字列のまま入っていないか、気温にあり得ない値が混ざっていないかなど、データの汚れを見つけて直す作業は、実務でも分析時間のかなりの部分を占めます。この段階で感じた違和感はメモに残しておきましょう。
集計とグラフで問いに答える
天気ごとの平均貸出回数を集計し、棒グラフで比べます。さらに、平日と休日で分けてみると、通勤利用が多い平日は雨でも減りにくいといった違いが見えてくるかもしれません。ここで出てきた発見が、最初の問いに対する一次的な答えになります。
単純なモデルで予測してみる
気温、天気、曜日を入力にして、貸出回数を予測する線形回帰モデルを作ります。精度を追い込む必要はありません。予測と実績のずれが目立つ日を確認し、祝日やイベント日だったのではないかと考えることで、データにない要因を推理する練習になります。
結論をREADMEに書く
最後に、問い、使ったデータ、わかったこと、わからなかったこと、次に試したいことを、GitHubのREADMEに数百字で書きます。分析結果を他人に伝わる言葉にする作業こそ、データサイエンティストの仕事の核心であり、最初の1本からこの形で残しておくと、後々ポートフォリオに組み込みやすくなります。見せ方を本格的に整える段階では、採用担当に伝わるポートフォリオの構成を参考に作り直すとよいでしょう。
始めたばかりの頃に手が止まりやすい場面
始めたばかりの頃は、学び方の選び方や題材の大きさ、データの扱い方でつまずきやすくなります。よくある場面と考え方を見ていきます。
教材選びに時間を使いすぎる
どの書籍や講座が自分に合うかを比べることに数週間かけてしまう人もいます。最初のうちは、教材の質より手を動かした量のほうが成長につながります。迷ったら、無料で今すぐ始められるものを選び、合わなければ乗り換えれば十分です。学ぶ順番の考え方はデータサイエンティストの勉強で解説しています。
いきなり画像認識や生成AIから入る
話題性のある深層学習から始めると、GPUの準備やモデルの仕組みが複雑で、何が起きているのかわからないまま終わりがちです。データサイエンティストの実務では、表形式のデータを集計し、比較し、予測する仕事のほうが多いため、まずはそちらで基礎の手応えを得てから広げるほうが遠回りになりません。
社内データを個人の環境に持ち出してしまう
職場のデータから始める場合に特に注意したいのが、データの持ち出しです。顧客情報を含むファイルを個人のGoogleドライブやColaboratoryにアップロードすると、たとえ学習目的でも情報管理の規程違反になるおそれがあります。社内のデータは社内の承認された環境で扱う、個人で練習するときは公開データを使う、という線引きを最初に決めておきましょう。個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等でも、個人情報を含む指示を外部のサービスに入力する場合は、利用目的の範囲内かを十分に確認することなどが求められています。
自分で進めてよいことと、経験者に相談したいこと
始めたばかりの段階でも、データの集計や可視化、公開データでの予測モデルづくりは、一人で試行錯誤して構いません。間違えても失うものは少なく、むしろ失敗から学べることが多い領域です。
一方で、分析結果をもとに実際の業務や予算の判断を変えようとする場面、たとえば「この施策で売上が増えた」と因果関係を主張するときや、作ったモデルを社内システムに組み込むときは、経験者のレビューを受けるべきです。相関と因果の取り違えや、テストでは良かったモデルが本番で外れる問題は、初心者には気づきにくいためです。厚生労働省の職業情報提供サイトjob tag(データサイエンティスト)でも、自分の分析結果やモデルが最善のものか、検討を続けていくと説明されています。社内にデータの専門部署があれば、早い段階で相談できる関係を作っておくと、学習の方向も修正しやすくなります。仕事の全体像をつかんでおきたい方は、データサイエンティストの基本で業務の流れを確認しておくと、自分が今どの部分を練習しているのかが見えやすくなります。
最初の分析が終わったら
1本目の分析を仕上げたら、同じデータで別の問いを立てる、別の題材で同じ流れを繰り返す、統計や機械学習の理論を補う、という三つの方向に広げていきます。どれを優先するかは入口によって異なり、社内データから始めた人は業務の問いを増やす方向、公開データから始めた人は題材の幅を広げる方向が自然です。
大切なのは、問いを立ててから結論を書くまでの一周を、小さくてもいいので何度も回すことです。何周か回すうちに、どこで時間がかかり、どこが自分の弱点なのかがはっきりしてきます。そこが、次に学ぶべき内容を自分で決められるようになる地点です。
