Webデザイナーのメソッドでデザインを効率化|プロが教える再現性の高い手順
- 最終更新日:2026/10/21
Webデザイナーとして制作を始めたものの、白紙の画面を前に手が止まる、時間をかけて作ったのに発注者の意図とずれてしまう、自分の作り方が正しいのか自信がない、と悩む人もいるのではないでしょうか。その原因はセンスの有無ではなく、制作の進め方が決まっていないことにある場合が多くあります。Webデザイナーのメソッドとは、毎回同じ流れで根拠のあるデザインにたどり着くための型のことです。この記事では、Webデザイナーのメソッドをリサーチ、情報設計、デザイン作成、見直しの四つの工程に分けて、再現しやすい手順と、つまずきやすいポイントを解説します。
Webデザイナーのメソッドとは何か
Webデザイナーのメソッドとは、目的を達成するための考え方と制作の手順を整理した型のことです。Webデザインは作品づくりではなく、発注者の課題を解決するための手段です。そのため、調子の良し悪しに左右されず、一定以上の成果を出せる再現性が求められます。
たとえば「かっこいいサイトにしてほしい」という依頼に対して、いきなりデザインツールを開いて色を塗り始めるのは、型がない状態です。メソッドを持つWebデザイナーは、まず「なぜかっこよさが必要なのか」「誰にそう感じてほしいのか」「その人はどんな端末で、どんな場面でサイトを見るのか」を確かめます。こうした問いに答えを出してから、配色やレイアウトの検討に入ります。
型を持つと、次に何をすべきかが明確になり、手が止まりにくくなります。デザインの根拠を説明できるため、方向性のずれによる修正も減らせます。メソッドはセンスがない人のための補助ではなく、感覚に頼りすぎて結果がぶれることを防ぐための土台です。デザインの基礎から確認したい場合は、Webデザイナーの基本もあわせて読んでみてください。
厚生労働省の職業情報提供サイトjob tag(Webデザイナー)でも、入職にあたって特に学歴や資格は必要とされないが、デザインの基礎知識・技術は必要と説明されています。また、利用者に支持されるサイトを作ることができるかという個人のスキルが問われる職業とも記載されています。毎回一定の品質を出せる型を持つことは、こうした力を安定して発揮するための方法です。仕事の全体像はWebデザイナーの仕事内容で確認できます。
メソッドの全体像と工程
Webデザイナーのメソッドは、四つの工程で構成されます。それぞれを飛ばさずに進めることが、手戻りを防ぐ大切なポイントです。
| 工程 | 目的 | 主な作業 |
|---|---|---|
| リサーチ | 何を作るべきかを明確にする | ヒアリング、ペルソナ設定、競合分析、ムードボード |
| 情報設計 | どの順番で伝えるかを決める | 情報の優先順位づけ、ワイヤーフレーム |
| デザイン作成 | どう見せるかを形にする | グリッドの設定、配色、文字の設計 |
| 見直し | 本当に伝わるかを確かめる | 根拠の確認、実機での確認、第三者のチェック |
家づくりに例えるなら、リサーチは土地の調査、情報設計は間取りの図面、デザイン作成は建築、見直しは引き渡し前の点検にあたります。以降で、それぞれの工程の進め方を具体的に見ていきます。アプリや業務システムの画面設計まで視野に入れる場合は、UI/UXデザイナーのメソッドで紹介している人間中心設計などの型も参考になります。
リサーチで何を作るべきかを明確にする
最初の工程はリサーチです。ここで集めた情報が、デザインのすべての根拠になります。リサーチを省くと、どれだけ見栄えが良くても「求めていたものと違う」という結果を招きかねません。
ターゲットの人物像を具体的にする
「〇〇代の女性」のような大まかな属性ではなく、どんな悩みを持ち、どんな生活をしている人なのかを具体的に描きます。たとえば「仕事帰りの電車でスマートフォンから習い事の教室を探している、〇〇代の会社員」と決めれば、ボタンの大きさ、文字の読みやすさ、写真の雰囲気、表示速度への配慮まで判断しやすくなります。人物像は作り話ではなく、設計の判断基準として使うものです。
表示速度については、Googleが公開しているCore Web Vitalsの考え方が参考になります。良好とされる目安は、ページの主要な内容が表示されるまでの時間を示すLCPが2.5秒以内、操作への反応の速さを示すINPが200ミリ秒以下、表示中のレイアウトのずれを示すCLSが0.1以下です。移動中にスマートフォンで見る人を想定するなら、画像の大きさなども設計の段階から意識しておきましょう。
競合のサイトを意図から読み解く
同じ業界のサイトがどんな見せ方をし、どんな強みを打ち出しているかを調べます。眺めるだけでなく、「なぜこのボタンはこの位置にあるのか」「なぜこの配色なのか」「なぜ最初の画面にこの言葉を置いているのか」を言葉にしながら分析することが大切です。目的は真似ることではなく、意図を読み取ることです。
ムードボードで雰囲気をそろえる
「かわいい」「落ち着いた」「信頼感がある」といった雰囲気は、言葉だけでは人によって受け取り方が違います。参考画像を集めたムードボードを作り、発注者と事前にイメージを共有しておきましょう。このとき、好きなデザインだけでなく、避けたいデザインも聞いておくと、認識のずれをさらに防げます。
情報設計で伝える順番を決める
リサーチが終わったら、集めた情報を整理し、利用者が迷わずに問い合わせや購入といった目的の行動にたどり着ける流れを作ります。この工程を丁寧に行うと、見た目を作る段階での迷いが減ります。
情報の優先順位を決める
伝えたいことをすべて同じ大きさで並べると、視線が分散して何も伝わりません。利用者が特に知りたい情報と、発注者が特に伝えたい情報を照らし合わせ、残すもの、目立たせるもの、省くものを決めます。サービスを紹介するサイトなら、何ができるのか、なぜ信頼できるのか、どう申し込むのか、という順番が基本になります。
ワイヤーフレームで合意を取る
色や装飾を入れずに、要素の配置だけを決めた設計図を作ります。Figmaなどのツールでも、紙への手書きでも構いません。この段階で発注者と配置の合意を取っておくことが大切です。合意がないまま見た目の制作に進むと、後から構成ごと変わる手間のかかる修正が起きやすくなります。
デザイン作成で根拠のある見た目に落とし込む
設計図が固まったら、色や文字、画像を使って具体的な見た目にしていきます。ここでも、なんとなく良い、ではなく、なぜこうしたのかを説明できる状態を目指します。
グリッドで配置をそろえる
画面を格子状に区切り、その線に合わせて要素を並べる方法です。配置に一貫性が生まれ、見やすく整った印象になります。余白や要素の大きさを8の倍数でそろえる8pxグリッドもよく使われる方法の一つです。ルールを決めておくと、ページが増えても見た目がぶれにくくなります。
配色と文字を目的に合わせて選ぶ
リサーチで決めた雰囲気に合わせて、ベースの色、メインの色、アクセントの色を決めます。面積の比率を70対25対5や60対30対10程度にする考え方は、配色を考えるときの目安としてよく知られています。たとえば落ち着いた信頼感を出したい法人向けのサイトなら、紺やグレーを軸にして、申し込みボタンだけに目立つ色を使う、といった決め方です。文字も同じで、上品さを出したいなら明朝体、親しみやすさを出したいなら丸みのあるゴシック体など、伝えたい印象から選びます。使うフォントの種類を絞ると、全体に統一感が出やすくなります。
全体から細部の順に作り込む
ボタンの影や画像の加工など、細かい部分から始めると全体のバランスが崩れやすくなります。まずはグレーの箱で要素の大きさと配置を決め、次に文字を流し込み、最後に色や装飾を加える、というように、全体から細部へ順に進めましょう。
見直しで伝わるデザインに仕上げる
形になったデザインを、利用者と発注者の目線で見直す工程です。少し時間を置いてから見直すと、制作中には気づかなかった点が見えてきます。
すべての要素の理由を説明できるか確かめる
「なぜこの余白の広さにしたのか」「なぜこの色なのか」「このボタンの文言は行動を促しているか」と、配置したすべての要素の理由を説明できるかを確認します。説明できない部分は、目的に合っているかを考え直すきっかけになります。この根拠の積み重ねが、発注者への説明のしやすさと信頼につながります。
実際の端末と第三者の目で確かめる
スマートフォンやタブレットの実機で表示を確認し、親指でボタンを押しやすいか、屋外でも文字が読みやすいか、スクロールの途中で申し込みボタンが目に入るかを確かめます。Webアクセシビリティの国際的な基準であるWCAG 2.2では、通常の文字のコントラスト比は4.5:1以上、クリックやタップの対象の大きさは原則として24×24 CSSピクセル以上が基準とされています。感覚だけでなく、こうした数値でも確かめておくと、見直しの根拠になります。可能であれば、同僚や家族など第三者にも操作してもらうと、自分では気づけない問題が見つかります。誤字脱字やリンク切れの確認も忘れずに行いましょう。確認の方法はWebデザイナーの校正で紹介しています。
メソッドを実践するときにつまずきやすい点
メソッドを学んでも、最初は思うように進まないことがあります。よくあるつまずきと、その対処を整理すると次のようになります。
| つまずき | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| リサーチに時間をかけすぎて制作が進まない | 調査の終わりが決まっていない | 調べる競合の数や参考サイトの数を、あらかじめ決めてから始める |
| ワイヤーフレームを作らずに装飾を始めてしまう | ツールの機能に目が向きがち | 手書きのラフで構成を固めてからツールを開く |
| 発注者からの修正が多い | 事前のイメージ共有が足りない | ムードボードで避けたいデザインも聞いておく |
| 納期に追われて工程を飛ばしてしまう | 各工程の時間を見込んでいない | スケジュールに工程ごとの時間を組み込んでおく |
また、メソッドをこなすこと自体が目的になってしまうのもよくある失敗です。リサーチもワイヤーフレームも、すべては利用者を動かし、発注者の目的を達成するためにあります。各工程で「これは利用者と発注者の両方にとって意味があるか」を問いかけましょう。
メソッドについてよくある誤解
メソッドがあればセンスは要らない、というのは誤解です。手順を踏んだうえで、最後の仕上げでは感覚的な判断も必要になります。メソッドはセンスを発揮するための土台と考えると、両方を生かせます。
メソッドは初心者向けのもの、というのも誤解です。経験を積むほど工程を省きたくなりますが、修正や手戻りが増えているときは、どこかの工程を飛ばしていることが多いものです。また、メソッドを踏むと制作が遅くなる、と感じるかもしれませんが、後から構成ごと作り直す手間と比べれば、結果として全体の制作時間を短くできることが多くあります。
メソッドを身につけて習慣にする方法
メソッドは一度読んだだけでは身につきません。日々の制作の中で繰り返し使い、自分の型にしていくための方法を紹介します。
自分専用のチェックリストを作る
「ヒアリングで目的とターゲットを確認したか」「ムードボードで方向性の合意を取ったか」「ワイヤーフレームで優先順位を確認したか」「グリッドに沿っているか」「実機で操作を確かめたか」といった項目を、自分なりにリスト化します。各工程の終わりに確認する習慣をつければ、品質のばらつきを抑えられます。
優れたサイトを構造から読み解く
普段から良いと感じたサイトを見たときに、ターゲットは誰か、情報の優先順位はどうなっているか、どんな配色の考え方かを分解して考える習慣をつけましょう。自分の中の引き出しが増え、制作のときの判断が速くなります。独学の進め方はWebデザイナーの勉強方法で紹介しています。独学で型が自己流になっていないか不安な場合は、現役のデザイナーから意見をもらえる環境を選ぶのも一つの方法です。学び方はWebデザインスクールでも比較しています。個別のスクールを検討する場合は、デジタルハリウッドSTUDIO by LIGの評判、WEBCOACH(ウェブコーチ)の評判、Winスクールの評判、rimomo(リモモ)の評判も参考になります。
考え方の過程をポートフォリオに残す
メソッドに沿って作った作品は、その考え方の過程自体がアピールの材料になります。完成したデザインだけでなく、リサーチで分かったこと、ワイヤーフレーム、見直しで変えた点もあわせて載せると、論理的に考えられることが伝わります。見せ方はWebデザイナーのポートフォリオで詳しく解説しています。
働き方による重点の置き方
会社でチーム制作をしている場合は、ワイヤーフレームやグリッドのように、共通の言葉になる工程を特に丁寧に行うと、エンジニアやディレクターとの連携がスムーズになります。副業やフリーランスで発注者と直接やり取りする場合は、リサーチと根拠の説明に重点を置き、ムードボードやワイヤーフレームの段階で合意を文字で残しておくと、修正の行き違いを防げます。案件の探し方はWebデザイナーの案件獲得で解説しています。
発注者の目的に沿って根拠を説明できる力は、担う工程を広げ、単価を上げていくことにもつながります。考え方はWebデザイナーの高単価で紹介しています。
今日からできる最初の行動
まずは、直近で作ったデザインを一つ選び、四つの工程のうちどこを省いていたかを振り返ってみてください。次の制作では、ヒアリングとワイヤーフレームの工程だけでも意識して行い、終わったあとに自分なりのチェックリストを作ってみましょう。小さく始めて繰り返すことが、型を自分のものにする近道です。
