データサイエンティストは稼げないのか?公的統計と収入が伸びない職場の見分け方
- 最終更新日:2026/10/15
「データサイエンティストは稼げない」という声と、「高年収の専門職」というイメージ。両方を目にして、どちらが本当なのか迷っている人は多いはずです。実はどちらも一部は事実で、厚生労働省の職業情報提供サイトでは平均年収611.9万円と示される一方、ハローワーク求人に書かれた月給の平均は29.6万円にとどまります。
この記事では、データサイエンティストが稼げないと感じる状況を公的統計と現場の業務から分解し、自分の環境がどちら側にあるのかを判断する材料をまとめます。
データサイエンティストは本当に稼げないのか?公的統計で確かめる
結論から言うと、職種全体として見れば稼げない仕事ではありません。ただし、平均値が高いことと、自分の給与が上がることは別の話です。まずは公的な数字を並べてみます。
| 指標 | 数値 | 出典となる調査 |
|---|---|---|
| 賃金(年収) | 611.9万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 平均年齢 | 43.9歳 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 1時間あたり賃金(一般労働者) | 3,000円 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
| 求人賃金(月額) | 29.6万円 | 令和7年度ハローワーク求人統計 |
| 有効求人倍率 | 8.91倍 | 令和7年度ハローワーク求人統計 |
数値は厚生労働省の職業情報提供サイトにあるデータサイエンティストのページから引用しています。
平均年収と求人の提示額がずれる理由
611.9万円は、平均年齢43.9歳の働き手について、月給の12か月分に賞与などを加えて算出した推計値です。一方の29.6万円はハローワークの求人票に書かれた月給の年間平均で、賞与は含まれず、経験の浅い人を募集する求人も多く混ざります。
仮に月29.6万円に賞与2か月分を足しても、年収は410万円台にとどまります。平均年収とのあいだには200万円近い開きがあり、「稼げない」という感想は、この入口側の条件に触れた人から出やすいと読むのが自然です。
統計を読むときに外せない前提
厚生労働省自身が、統計上の職業分類はその職業だけを示しているとは限らないと注記しています。データサイエンティストという肩書きの人だけを集計した数字ではない可能性があるため、あくまで目安として扱うのが安全です。
有効求人倍率8.91倍も、ハローワークを経由した求人に限った数値です。求人の多さは示していても、一つひとつの求人の待遇が良いことまでは保証していません。求人が多いのに稼げないと感じる人がいるのは、「数が多い」と「条件が良い」を同じものとして受け取ってしまうことが一因です。
なお、労働時間の長さや責任の重さといった収入以外の不満は、データサイエンティストはやめとけと言われる理由の検証で取り上げています。この記事ではお金の面に絞って話を進めます。
収入が伸び悩むデータサイエンティストに多い5つの状況
稼げないと感じている人の話を整理すると、能力不足よりも「担っている工程」と「所属する組織の仕組み」に原因があるケースが目立ちます。典型的なパターンを5つに分けて見ていきます。
肩書きは分析職でも実態はレポート作成担当
社内でデータサイエンティストと呼ばれていても、日々の業務がBIツールのダッシュボード更新、週次KPIレポートの集計、SQLでのデータ抽出依頼への対応で埋まっているケースは少なくありません。こうした業務は組織に必要なものですが、職務等級の上では定型業務として扱われやすく、統計モデルや機械学習を使った提案に比べて評価の伸びしろが小さくなりがちです。
PoCで終わり、本番運用まで届かない
PoC(小規模に試して効果を確かめる検証工程)で需要予測モデルの精度を出しても、基幹システムへの組み込みや現場の運用設計が進まず、検証報告書だけが残る。データ分析の現場で繰り返し語られる典型的な失敗パターンです。売上やコスト削減の数字に結びつかないため、プロジェクトの数がいくら増えても昇給の根拠になりにくい点が難点です。
未経験転職の直後に起きる年収のリセット
前職で年収500万円台だった営業職が、ポテンシャル採用でデータ分析職に移ると、ジュニア向けの給与テーブルに入って年収が一時的に下がることがあります。これは職種そのものより、経験年数で給与が決まる仕組みによるものです。2〜3年のうちにモデル構築や施策提案の実績を作れれば取り戻せる余地はありますが、生活費の見通しを立ててから動く必要があります。
受託分析の下流工程を担っている
分析を請け負う会社では、顧客との要件定義をコンサルタントやPMが担い、データサイエンティストは前処理と集計を任される体制がよく見られます。この場合、案件の単価は上流側で決まり、下流の担当者は作業時間で評価されます。スキルを上げても、それが給与に反映されるまでに時間がかかりやすい構造です。
副業で単発の集計案件を安く受けている
クラウドソーシングに並ぶ分析系の副業には、Excelデータの整形やグラフ作成など、データサイエンスの専門性をあまり必要としない案件も混ざっています。こうした仕事を時給に換算すると、本業より低くなることも珍しくありません。クラウドワークスで見つかるデータサイエンティスト向け案件の傾向を先に把握しておくと、単価の低い案件ばかりを抱え込む事態を避けやすくなります。
収入が伸びる人は何が違うのか
同じ職種名でも年収に大きな差がつくのは、スキルの総量よりも、価値の出し方と身を置く場所の違いによるところが大きいと考えられます。
モデルを業務に組み込むところまで担える
学習済みモデルをAPIとしてシステムに載せる、精度の劣化を監視して再学習の仕組みを作るといった工程は、MLOpsと呼ばれる領域です。ここまで関われる人は分析とエンジニアリングの両方を担えるため、応募できる求人の幅も年収の上限も広がります。Pythonで分析用のノートブックを書ける段階と、本番運用まで設計できる段階とでは、市場での扱いが大きく変わります。
業界の指標で効果を説明できる
小売なら在庫回転率や廃棄ロス、金融なら貸倒率、製造なら不良率といった、その業界の指標でモデルの効果を語れるかどうかが評価を分けます。「AUCが0.85になりました」ではなく「発注量の見直しで廃棄が月にどれだけ減る見込みか」に置き換えて話せる人は、経営層の意思決定に近い場所で仕事を任されやすくなります。
専門職として評価する制度がある会社にいる
管理職にならなくても等級が上がる専門職コースを持つ会社と、分析担当を一般職と同じ給与テーブルで扱う会社とでは、同じ成果を出しても年収の伸び方が違います。本人の努力とは別に、会社選びそのものが収入を左右する点は押さえておきたいところです。年代や役割ごとの具体的な金額は、データサイエンティストの年収相場と年代別の目安を見ると全体像がつかめます。
今の職場が稼げない側かを見分けるチェック表
次の項目のうち、当てはまるものが多いほど、個人のスキルより環境が収入の天井になっている可能性があります。
- 業務時間の半分以上が定型レポートや抽出依頼への対応に使われている
- 過去1年で、自分の分析やモデルが施策として実行された例がない
- 評価面談で、分析の中身ではなく作業量だけが話題になる
- 上司やチームにデータ分析の経験者がいない
- 専門職向けの等級や手当がない
- データ基盤が整っておらず、毎回CSVを手作業で集めている
3つ以上当てはまる場合は、社内で役割を広げる交渉をするか、環境を変えることを検討する段階に来ています。ただし実務1〜2年目であれば、基礎を固める時期と割り切って経験を積む判断もあり得ます。
立場別に考える収入の伸ばし方
学習中や未経験の人
最初から高年収を狙うより、実データに触れられる職場に入ることを優先した方が、結果的に収入の伸びは早くなりやすいです。前職の業界知識を持ち込める事業会社の分析ポジションは、未経験でも評価される材料があるため有力な候補になります。どの順番で経験を積むかは、データサイエンティストのキャリアパスを手がかりに、3〜5年先の役割から逆算して考えると迷いにくくなります。
社内で分析担当になった会社員
まずは定型レポートをPythonやBIツールの機能で自動化して時間を空け、その時間で「売上が落ちた店舗の要因分析」のように意思決定につながるテーマを1つ提案するのが現実的です。提案が施策として実行され、成果を数字で示せれば、評価面談で専門性を主張する根拠になります。
経験3年以上で年収が頭打ちの人
業務範囲を本番運用やプロジェクトのリードまで広げられないなら、転職や業務委託で自分の市場価値を確かめる時期です。業務委託やフリーランスは単価が上がる可能性がある一方で、案件が途切れるリスクや、社会保険と税務の手続きを自分で負う負担もあります。会社員との違いをつかむには、フリーランスとして働くデータサイエンティストの実態が判断材料になります。
副業で収入を足したい人
単発の集計作業よりも、ダッシュボードの設計や分析の内製化支援のように、継続契約につながる案件を狙う方が時間単価は安定しやすくなります。本業の就業規則で副業が認められているか、取引先が競合にあたらないかは事前の確認が必要です。案件探しから契約までの流れは、データサイエンティストが副業を始める手順に沿って進めると抜け漏れを防げます。
収入の話で取り違えやすいこと
資格を取っても給与が上がるとは限らない
統計検定やG検定は、学習の指針や書類選考での補強材料にはなります。ただ、資格手当がない会社では取得しただけで年収は変わりません。採用側が見るのは、資格と合わせて何を分析し、どんな結果を出したかという中身の方です。
Kaggleの順位はそのまま年収にならない
コンペで上位に入る力は、整えられたデータで予測精度を競う力です。実務では、データの欠損や定義のずれを関係部署と調整する時間の方が長く、そこを担えるかどうかが評価に直結します。Kaggleの実績は入口でのアピールには有効ですが、それだけで高年収のオファーが届くと考えるのは楽観的です。
人材不足は待遇が上がる約束ではない
人材不足が続くという見通しがあっても、待遇が自動的に上がるわけではありません。生成AIで前処理やコード作成の一部が効率化されるなか、手を動かす作業だけを担う立場には単価が下がる圧力もかかります。業界全体の見通しを確認したいときは、データサイエンティストの将来性についての分析が参考になります。
稼げるかどうかは、職種名よりも「どの工程を担い、誰に成果を説明しているか」で決まる部分が大きい仕事です。チェック表で環境の問題が見えたなら動く理由になりますし、スキル側の課題が見えたなら、次の1年で広げるべき工程がはっきりします。
