UI/UXデザイナーが押さえるべきメソッド|実務で使える型を解説
- 最終更新日:2026/10/21
UI/UXデザイナーが実務で成果を出し続けるには、感覚だけに頼らず、状況に応じて使い分けられる型を身につけておくことが近道です。UI/UXデザイナーのメソッドを知っていると、デザインの根拠を説明しやすくなり、チーム内の認識合わせもスムーズになります。この記事では、UI/UXデザイナーのメソッドとして押さえておきたいプロセスの型と、工程ごとに使える代表的な手法、案件に合わせた使い分け方、身につけるための手順と注意点を解説します。
UI/UXデザイナーのメソッドが必要な理由
UI/UXデザイナーのメソッドとは、調査から設計、検証までの考え方や進め方を、誰にでも説明できる形に整理した型のことです。感覚だけで進めていると、なぜそのデザインにしたのかを関係者に説明できず、修正の合意に時間がかかることがあります。また、プロジェクトごとに進め方がばらばらになり、引き継ぎや振り返りもしにくくなります。
メソッドを使うと、同じ流れを再現しやすくなり、「なぜこの機能をこの位置に置いたのか」「なぜこの導線にしたのか」を根拠と一緒に伝えられるようになります。ただし、メソッドはあくまで考えを整理するための道具です。当てはめること自体が目的になると、かえって発想が狭くなる点には注意しましょう。
厚生労働省の職業情報提供サイトjob tag(UX/UIデザイナー)でも、デザインの基礎や情報設計の基礎に加え、ユーザーの側に立った設計のための人間中心設計や心理学の知識、プレゼンテーション能力が求められる場面もあると記載されています。メソッドを身につけることは、こうした知識を実務で使える形にすることでもあります。仕事の全体像はUI/UXデザイナーの仕事内容で確認できます。
全体の進め方を決めるプロセスの型
まずは、プロジェクト全体の流れを考えるときの土台になる三つの型を紹介します。
人間中心設計
人間中心設計は、利用者を中心に置いて、利用状況の把握、要求の明確化、解決策の作成、評価を繰り返しながら設計を進める考え方です。国際規格のISO 9241-210にも定められており、多くのUI/UXの手法の土台になっています。評価の結果をもとに前の段階へ戻ることを前提にしている点が特徴です。
ダブルダイヤモンド
ダブルダイヤモンドは、英国のデザインカウンシルが示したモデルで、発見、定義、展開、提供の四つの段階で進めます。最初のひし形で課題を広く調べてから絞り込み、次のひし形で解決策を広く考えてから絞り込む、という発散と収束の流れを表しています。正しい課題を見つける前に解決策を考え始めてしまう失敗を防ぐのに役立ちます。モデルの考え方は、デザインカウンシルのFramework for Innovationで紹介されています。
デザイン思考
デザイン思考は、共感、問題定義、アイデア創出、プロトタイプ、テストという五つの段階で整理されることが多い考え方です。利用者への共感から出発し、早い段階で簡単な試作品を作って確かめることを重視します。デザイナー以外のメンバーとも共通の言葉で話しやすいため、チームで進める場面で使われています。
工程ごとに使える代表的な手法
プロセスの型の中で、具体的にどんな手法を使うかを工程ごとに整理すると、次のようになります。
| 工程 | 代表的な手法 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 調査 | ユーザーインタビュー、行動観察、アクセス解析 | 利用者の行動や困りごと、利用の状況を知る |
| 定義 | ペルソナ、カスタマージャーニーマップ | 誰のどんな課題を解決するかを関係者でそろえる |
| 設計 | カードソート、情報設計、ワイヤーフレーム、プロトタイプ | 情報の構造や画面の流れを形にする |
| 検証 | ユーザビリティテスト、ヒューリスティック評価、A/Bテスト | 使いやすさの問題を見つけ、改善の効果を確かめる |
たとえばカードソートは、利用者に項目を分類してもらい、メニューやカテゴリの分け方を考える手法です。ヒューリスティック評価は、ヤコブ・ニールセンが示した10の原則のような経験則をもとに、専門家が画面を点検する方法です。ユーザビリティテストは、実際の利用者に操作してもらい、つまずく場所を見つけます。少人数でも多くの問題が見つかるとされているため、小さな規模から始めやすい手法です。
案件に合わせたメソッドの使い分け
メソッドは一つに固定するのではなく、案件の目的や規模に合わせて使い分けることが大切です。
新しいサービスを立ち上げるとき
新しいサービスでは、そもそも誰のどんな課題を解決するのかがはっきりしていないことが多くあります。ユーザーインタビューで利用者の状況を知り、ペルソナやカスタマージャーニーマップで課題を整理したうえで、簡単なプロトタイプを作って確かめる、という仮説検証を重視した進め方が向いています。
既存のサービスを改善するとき
すでに使われているサービスでは、アクセス解析やヒートマップで利用のデータを見て、離脱が多い場所を特定するところから始めます。原因の見当がついたら、ユーザビリティテストで実際のつまずきを確かめ、改善案をA/Bテストで比べる、という現状分析を重視した流れが使われます。
期間や予算が限られているとき
短い期間で方向性を決めたい場合は、Google Venturesが広めたデザインスプリントのように、課題の整理から試作、利用者によるテストまでを短期間に凝縮した進め方があります。時間がない場合でも、ヒューリスティック評価や少人数のユーザビリティテストのように、工程の少ない手法を選べば、検証を省かずに進められます。
メソッドを実務で使えるようにする手順
ここからは、メソッドを学び、実務で使えるようにしていくための手順を紹介します。デザインの基礎にまだ不安がある場合は、先にUI/UXデザイナーの基本を確認しておくと理解しやすくなります。
手法ごとの目的を理解する
まずは、それぞれの手法がどんな課題を解決するためのものかを把握しましょう。目的を理解しないまま手順だけを真似ると、効果が出にくくなります。学び方の全体像はUI/UXデザイナーの勉強方法で、手法を体系的に学べる本はUI/UXデザイナーにおすすめの本で紹介しています。講座で添削を受けながら学びたい場合は、UI/UXデザイナーにおすすめのスクールも参考になります。
小さな題材で最初から最後まで試す
メソッドは、実際に手を動かして初めて身につきます。いきなり規模の大きい案件で使うのではなく、模擬案件や小規模な仕事の中で一つの手法を選び、最初から最後まで通して試してみましょう。うまくいかなかった部分を振り返ると、次に使うときの精度が上がります。試した過程は、そのままポートフォリオで考え方を伝える材料にもなります。見せ方はUI/UXデザイナーのポートフォリオで解説しています。
案件の条件を見て選び分ける
慣れてきたら、案件の目的、期間、予算、チームの状況を見て、どの手法を組み合わせるかを自分で決められるようにします。この使い分けができるようになると、提案の説得力が変わり、上流の工程を任される機会も増えていきます。担う工程と単価の関係はUI/UXデザイナーの高単価で詳しく解説しています。
メソッドを使うときの注意点
よくある失敗は、話題になっている手法を目的も理解しないまま取り入れ、課題の解決につながらないパターンです。案件の規模に対して工程の多い手法を選ぶと、スケジュールを圧迫し、肝心の検証を省くことになりかねません。手法を選ぶ前に、期間や予算を踏まえて、必要な工程で成果を出せる方法を考えましょう。
また、チームのメンバーが手法の用語や進め方に慣れていない場合、かえって認識のずれを生むことがあります。導入する際は目的と進め方を丁寧に説明し、必要に応じて簡略化するなど、現場に合わせて運用しましょう。ユーザーインタビューの設計や、統計的な解釈が必要なデータ分析は、やり方を誤ると誤った結論につながるため、経験のあるリサーチャーやシニアデザイナーに確認してもらうと安心です。生成AIで調査結果の整理を効率化することもできますが、解釈の妥当性は自分で確かめましょう。使い方はUI/UXデザイナーのAI活用で紹介しています。
メソッドについてよくある誤解
有名なメソッドを使えば良いデザインができる、と考えるのは誤解です。メソッドは考えを整理し、根拠を明確にするための道具であり、使う人の理解度や案件との相性によって成果は変わります。
経験を積めばメソッドは要らなくなる、と考える人もいますが、経験豊富なデザイナーほど状況に応じて手法を使い分けていることが多く、経験とメソッドは対立するものではありません。両方を組み合わせることが、安定した成果につながります。今後求められる役割の変化はUI/UXデザイナーの将来性で整理しています。
今日からできる最初の行動
まずは、普段の業務で使っている手法を一つ書き出し、それがどの工程の、どんな課題を解決するためのものかを言葉で説明できるか確かめてみてください。説明しにくいと感じたら、その手法の背景にある考え方を調べ直しましょう。そのうえで、次の案件では目的に合った手法を一つ選び、意図して使ってみることから始めてみてください。
