高校生からデータサイエンティストを目指すには|進路の選び方と在学中にできる5つの準備
- 最終更新日:2026/10/15
データを使って社会の課題を解く仕事に興味を持ち、高校生のうちからデータサイエンティストを目指したいと考える人が増えています。ただ、どの学部に進めばよいのか、文系でも目指せるのか、今の高校生活で何をしておけばよいのかは、学校の進路指導だけでは分かりにくいものです。
この記事では、高校生がデータサイエンティストを目指すときに知っておきたい前提を公的なデータで確認し、進路の選択肢の比べ方と、在学中から始められる準備を具体的に紹介します。
高校生がデータサイエンティストを目指す前に知っておきたい前提
最初に押さえておきたいのは、データサイエンティストは高校卒業後すぐに就くのが難しい職種だということです。厚生労働省の職業情報提供サイトでは、この仕事に就いている人に多い学歴として、次のような割合が示されています。
| 学歴 | 割合 |
|---|---|
| 大卒 | 55.3% |
| 修士課程卒 | 44.7% |
| 博士課程卒 | 29.8% |
| 高卒 | 2.1% |
| 専門学校卒 | 2.1% |
合計が100%を超えるのは、回答で複数の学歴が選ばれているためと読めます。細かな数字よりも、大卒と大学院卒が中心で、高卒の割合が小さいという傾向をつかんでおくことが大切です。
大学進学が主なルートになる理由
データサイエンティストの仕事は、統計学や機械学習の理論を理解したうえで、Pythonなどを使って分析を組み立てることが求められます。確率や線形代数、微分積分といった数学の土台を体系的に学ぶ機会は、大学のカリキュラムに用意されていることがほとんどです。企業の新卒採用でも、大学や大学院で分析や研究に取り組んだ経験が評価の材料になるため、進学を前提に計画を立てるのが現実的です。
高校の「情報I」が最初の入口になる
2022年度の入学生から、高校では「情報I」が必修になりました。プログラミングやデータの活用といった単元は、データサイエンティストの仕事の入口そのものです。2025年1月の大学入学共通テストからは「情報」も出題されるようになったため、受験対策と将来の準備を同時に進められる環境が整っています。
進路の選択肢を比べる
データサイエンティストにつながる進路は、データサイエンス学部だけではありません。主な選択肢を並べてみます。
| 進路 | 主に学べること | 向いている人 |
|---|---|---|
| データサイエンス学部・学科 | 統計、情報、応用分野をまとめて | 早くから分析を専門にしたい人 |
| 情報工学・数学・統計系の学部 | 理論やプログラミングを深く | 技術の土台を固めたい人 |
| 経済・経営・心理などの学部 | 専門分野のデータ分析 | 特定の業界や分野に関心がある人 |
| 専門学校 | ツールの実践的な使い方 | 短期間で実務の技術を身につけたい人 |
データサイエンス学部で学ぶ
2017年に滋賀大学が国内で初めてデータサイエンス学部を設置し、その後も各地の大学で学部や学科の新設が続いています。統計と情報の両方を1年生から学べるうえ、企業や自治体の実データを使った演習を取り入れている大学も多く、最短距離で分析の経験を積めるのが強みです。新設の学部は卒業生の就職実績がまだ少ないため、カリキュラムの中身や教員の研究分野を自分で確かめる必要があります。
情報工学や数学など隣接する学部で学ぶ
情報工学ではプログラミングやデータベース、数学科や統計学科では理論の基礎を深く学べます。データサイエンティストとして働く人の中にはこうした学部の出身者も多く、学部名にこだわる必要はありません。大学院で機械学習の研究に進むと、研究開発に近いポジションを目指しやすくなります。
文系学部から目指す
経済学部の計量経済学、心理学部の統計的な実験手法など、文系学部にもデータ分析を本格的に学べる分野があります。文部科学省は、大学や高専の数理・データサイエンス・AI教育のうち優れたものを認定する制度を設けており、学部を問わず受けられるリテラシーレベルや、専門分野で応用する力を養う応用基礎レベルのプログラムがあります。文系学部に進んでも、こうしたプログラムを組み合わせれば分析の力を身につける道は開かれています。
専門学校で学ぶ
AIやデータサイエンスのコースを設ける専門学校もあり、PythonやBIツールの使い方を短期間で集中的に学べます。一方、データサイエンティストの求人では大卒以上を応募条件にしている企業もあるため、卒業後に目指す就職先の応募条件を、入学前によく調べておく必要があります。
大学院まで視野に入れるか
先ほどの表のとおり、修士課程卒は大卒に次いで多い学歴です。研究開発型のポジションでは大学院での研究経験が評価されやすい一方、事業会社で分析を担う仕事なら学部卒から就職する人も多くいます。高校生の段階で決める必要はなく、大学で学んでみて研究に興味がわいたら考える、という順番で十分です。
オープンキャンパスで確かめたいポイント
パンフレットだけでは分からないことも多いため、オープンキャンパスや個別相談では次の点を確認しておくと、入学後のギャップを減らせます。
- 文部科学省の認定プログラムを開設しているか
- 企業や自治体の実データを使う授業があるか
- 何年生からゼミや研究室に入れるか
- 入試で数学がどこまで必要か
- 卒業生や上級生の就職先、大学院への進学率
- Pythonなどのプログラミングを何年生から学ぶか
実際の仕事の中身を先に知っておくと、質問の精度も上がります。データサイエンティストの仕事内容を読んでからオープンキャンパスに行くと、カリキュラムが仕事のどの部分につながるかを判断しやすくなります。
在学中から始められる5つの準備
大学に入ってから本格的に学ぶとしても、高校生のうちにできることはたくさんあります。受験勉強と両立しやすいものを中心に紹介します。
数学Bの「統計的な推測」を丁寧に学ぶ
高校数学の数学Bには、確率分布や推定、仮説検定の考え方を扱う「統計的な推測」の単元があります。データサイエンティストが毎日使う考え方の入口なので、試験範囲かどうかにかかわらず丁寧に学んでおく価値があります。数学Ⅱの微分積分や、数学Cのベクトルも、大学で学ぶ機械学習の理論につながっています。
情報Iのプログラミングを一歩深める
授業で学ぶプログラミングに加えて、自宅のパソコンで無料のPython環境を使い、簡単な集計やグラフを作ってみると理解が深まります。最初は教科書の例題を少し変えて動かすだけでも十分です。
身近なデータで小さな分析をする
部活動の試合記録、通学時間と天気の関係、政府統計の総合窓口であるe-Statで公開されている地元の人口データなど、身近なテーマで「問いを立てて、データで確かめる」経験を1つ作ってみましょう。結論が当たり前のものでも、自分で手を動かした経験は総合型選抜の面接や志望理由書でも語れる材料になります。
統計グラフのコンクールに挑戦する
各都道府県で開かれ、優秀作品が全国コンクールへ進む統計グラフコンクールには、高校生以上の作品を対象にした部門があります。テーマ設定からデータの収集、グラフでの表現までを一通り経験できるため、データサイエンティストの仕事の流れを小さく体験する機会になります。
英語の資料に触れる習慣をつける
分析に使うライブラリの説明書や最新の研究論文は、英語で書かれていることが多くあります。難しい論文を読む必要はありませんが、英語の技術記事を辞書を使いながら読んでみる習慣は、大学に入ってから大きな差になります。
進路を決める前に考えておきたいこと
学部の名前だけで選ばない
データサイエンス学部という名前でも、統計の理論に強い大学もあれば、経営や地域の課題解決に重点を置く大学もあります。自分が興味を持てる応用分野があるかどうかで選ぶと、大学4年間の学びが充実しやすくなります。
数学が苦手でも避けては通れない
文系からでも目指せる仕事ですが、統計や機械学習を理解するには数学を使う場面がどうしても出てきます。今の時点で苦手でも、大学で基礎から学び直す覚悟があれば十分に追いつけます。自分の性格や得意なことが合っているかは、データサイエンティストに向いてる人の特徴と照らし合わせて考えるのも1つの方法です。
職種の呼び名や役割は変わっていく
技術の進歩に合わせて、データサイエンティストの仕事の中身や呼び名は少しずつ変わってきました。10年後に同じ名前の職種があるかどうかよりも、データから問いを立てて確かめる力を身につけておけば、どんな職種名になっても生かせます。職種の定義そのものを確認したいときは、データサイエンティストとはどんな職業かを押さえておくと話がぶれません。
大学に進んだ後の動き方は、大学生がデータサイエンティストを目指すときの準備に続きをまとめています。高校生の今は、数学と情報の授業を大切にしながら、身近なデータに「なぜだろう」と問いを向けてみる。その小さな積み重ねが、進路を選ぶときの確かな判断材料になります。
